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女性視点プラスで売上増大 #ワークマン女子。新規顧客開拓のカギは「異常値」「声」「女性社員」

職人向けの作業服専門店を運営する株式会社ワークマンが、10月16日、初めて女性に焦点をあてた衣料店「#ワークマン女子」をオープンした。創業以来、男性作業着を作り続けてきた同社が、大きく舵を切った今回の出店。新店舗オープンで見えた、商品開発への試みを探った。


女性視点ポイント

  1. 売り上げの「異常値」から客層の変化を読み取る
  2. リアルな声を参考に商品開発に取り組む
  3. 女性社員が主導してアイディアを店舗に実現


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目次[非表示]

  1. 1.小さな「異常値」で気が付いた予想外のニーズ
  2. 2.アンバサダー制度で「声」を聞く
  3. 3.時代はファッション性から機能性重視へ


小さな「異常値」で気が付いた予想外のニーズ


プレオープン日には多くの公式アンバサダーが取材に訪れていた。個々が内容も自由に発信OKだ。「こう書いてほしい」「これはダメ」という要望はない。そのほうが本当に自然の声だから、というスタンスをとっている

さわやかな秋晴れが広がるなか、神奈川県横浜市の桜木町駅前に誕生した「#ワークマン女子」1号店。ワークマンならではの作業服・作業用品を一切置かず、アウトドア・レイン・スポーツウェアを主軸とした新店舗は、これまで全国に展開してきた888店舗(作業服専門店「ワークマン」662店舗/一般向けおよび作業服専門店「ワークマンプラス」226店舗)のなかでも、最大級の売り場面積を誇る。

今年で創業41年目を迎えた同社は、「高機能・高品質の商品を低価格で提供する」ことを目標に掲げ、設立以来一貫して、職人向けの防護服やレインウェア・つなぎ・とび服・安全靴などの作業関連用品を製造・販売してきた。

約300人の社員のうち3分の2以上を男性社員が占め、客層としても社内風土としても、女性が大きく関わることはほとんどなかった。

ところが、とあるSNSでの投稿がきっかけで、「ワークマン」の商品が女性の熱い視線を一気に集めるようになる。「『ファイングリップシューズ』という厨房用の靴が、梅雨時に急に売り上げを伸ばしたんです。店舗スタッフに尋ねたところ、若い女性が購入していることがわかりました」と振り返るのは、営業企画部兼広報部の林知幸さんだ。

さらに調べていくと、この靴がマタニティシューズに適していると勧めるSNSの投稿を見つけた。このことがきっかけで、店舗には妊婦や赤ちゃんを抱っこした女性が数多く訪れるようになったという。「滑らないという靴の機能性に共感して、本来我々が想定しなかったお客様が購入してくれました。

もしかしたら『ワークマン』の作業服や靴は、一般のお客様にとって魅力的な商品に映っているのではないかという思いが頭をよぎりました」と林さんは語る。そもそも男性作業着の市場だけでは、「1000店舗・1000億円」の売り上げが限界だろうという焦りもあった。

そんなとき、ふと見つけた梅雨時の「異常値」が、新しい見込み客を掘り当てるサインになったのだ。


靴売り場のフロアは、床に靴をおくとそのままインスタ撮影ができるイラスト画が施されている。思わず編集スタッフもパチリ

その後も「ワークマン」で買い物を楽しむ女性や一般客は増え続け、林さんの直感は確信へと変わっていった。2018年、ついに同社は一般向けの新業態、アウトドア・スポーツウェアを多く扱う「ワークマンプラス」を「ららぽーと立川立飛店」にオープンした。さらにその2年後、女性を主体にした「#ワークマン女子」が初めて登場することになったのだった。

男性向け市場からの思い切った方向転換に、「お客様が先に商品に目をつけて使用してくれていた。今回は我々が後を追いかけただけです」と林さんは笑う。

アンバサダー制度で「声」を聞く

「ワークマンプラス」の店舗が増えるにつれ、女性社員の採用も徐々に増えたが、もともと同社は女性ウェアの開発に対してさほどノウハウがなかったという。そんなとき商品開発の頼もしい味方になってくれたのが、独自に採用した約30人の公式アンバサダーの存在だ。

ブロガーをはじめ、ユーチューバーやインスタグラマーを含めたアンバサダーたちは公募で決めるのではなく、各自の投稿を見て同社が判断した。フォロワー数の大小に関係なく、商品への深い愛着を感じられるユーザーに直接メッセージを送って協力を仰いだ。30名近くいるアンバサダーのうち20名は女性というあたり、同社の女性向け商品を一から学ぼうとする熱意がよく伝わってくる。「彼らは本社に足を運びマーチャンダイザーと話して改善点を伝えてくれます。

実はこの制度には金銭のやり取りが一切発生していません。その代わり、自分が関わった商品が店頭に並んだり、活動内容を各自のSNSで配信しフォロワーを増やすのに役立ててもらっています」。このwin-winの関係があるからこそ、アンバサダーたちは遠慮なく思ったことを口に出せるし、その貴重な「声」が新商品にあますことなく活かされる。撥水加工を施したワンピースやスカート、ポケットがたくさんついたトップスなど、リアルな声を実現したウェアは、実際消費者に人気が高い。


公式アンバサダーと共に作った商品横には、公式アンバサダーのSNSなどに飛べるQRコードを大きく告知。写真はキャンプブロガーのサリーさん。インセンティブは「フォロワー増加の支援」という関係を築いている

もうひとつ、同社の転換点にまつわる興味深いエピソードがある。今回新たに出店した「#ワークマン女子」には、店内に4か所のインスタ映え・動画映えスポットを作った。当初携わったのは営業企画部の男性社員だったが、女性視点ゼロの提案内容に女性社員から厳しい指摘を受けた。企画チームは総入れ替えとなり、女性社員が主導して「ゆるキャラ」作りや「小顔効果のためのアイテム制作」など次々にアイデアを発信。結果、女性主体の店舗にふさわしい見事な映えスポットがでそろった。

時代はファッション性から機能性重視へ

SNSの一投稿がきっかけで、思いがけず多くの女性ファンを獲得したワークマンだが、その背景には女性トレンドの変化が見え隠れする。お洒落から機能性ファッションへ、ハイヒールからスニーカーへ転身する女性が後を絶たないなか、同社に寄せられる期待はますます大きくなっている。

もちろん林さんもその点を見逃さない。「他社製品と比べたとき、ワークマンならではの機能性ウェアがどこまで勝負できるのかを考えています。これからの売り上げは女性客にかかっている。今回出店した「#ワークマン女子」のように女性に向けて舵取りをしていかないと、いずれまた限界がくると思っています。」

特に今回のコロナ騒動を経て、新たな動向が生まれつつあると林さんは指摘する。3密を避け、家族で外出する機会が増えたことだ。「今後の新規出店はすべて『ワークマンプラス』と「#ワークマン女子」の業態で出す予定です。ターゲット層を分けることで、各店の混雑を減らし、必要な人が必要な時にスムーズに購入できるよう工夫しています」(林さん)。

同社はまた、急速な店舗拡大の傍ら、SDGsを意識した企業活動も地道に続けている。オリジナルスポーツウェア「Field Core(フィールドコア)」のデニムパンツ「AERO STRETCH(エアロストレッチ)」は、2020年モデルより地球環境に配慮した製造を始めている。もともと衣類加工に最大70リットルもの水を使用してきたが、現在は7リットルにまで削減。スペインのJeanologia社の技術協力を得て、環境に優しい工程を実現している。また、衣料店には欠かせない配送のための多数の段ボールも、複数回利用できる「通い箱」を活用中だ。

高い機能性と魅力的な価格で果敢に挑むワークマン。とどまることのない挑戦は、長引くコロナ不況を打破する勇気を与えてくれる。


公式アンバサダーと共に作った商品横には、公式アンバサダーのSNSなどに飛べるQRコードを大きく告知。写真はキャンプブロガーのサリーさん。インセンティブは「フォロワー増加の支援」という関係を築いている


株式会社ワークマン 
営業企画部販売促進グループ
丸田純平 様


〒110-0015 東京都台東区東上野4-8-1 TIXTOWER UENO
■事業内容:作業着や作業関連用品、アウトドア・スポーツウェアなどを扱うワーキングウェア専門店。全国でフランチャイズを展開し現在888店舗を抱える。高い機能性を持つ低価格の商品を企画・生産・販売している。
■年商:1,622,718,300円(2020年3月時点)
■創業:1979年11月30日(株式会社ワークマンとしての設立は1982年8月19日)

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日野佳恵子
日野佳恵子

株式会社HERSTORY(ハー・ストーリィ)代表取締役  1990年創業 タウン誌の編集長、広告代理店のプランナーを経て、結婚、出産を機に専業主婦を経験。女性のクチコミ力、井戸端好きに強い衝撃を覚え、広告よりクチコミのパワーが購買に影響を及ぼしていることを確認。一貫して男女の購買行動の違いに着目したマーケティングを実践し、女性客マーケティングという独自分野を確立。多数のコミュニティや実店舗を自ら運営。10万人の生声、3万件に及ぶアンケート分析、5万人以上の男女購買行動を研究。

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