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豊かな生活のための消費行動と気遣いの消費行動

市場の8割を左右する女性視点マーケティング詳解 vol.16


女性視点マーケティング戦略コラム


女性視点マーケティングの第一人者であり、株式会社HERSTORYの代表取締役でもある日野佳恵子による、本連載。第16回目は、女性特有の2つの消費行動についてお話しします。


HERSTORYは、女性視点マーケティングを専門に事業を展開しています。この連載記事では、「女性視点マーケティング」の重要性に焦点を当て、具体的な事例を交えてわかりやすく解説していきます。皆様のビジネスに新たな視点やアイデアを提供し、今後の展開に役立てていただける内容となっています。ぜひ、ご活用ください。


 

日々の生活を豊かにしようとする女性の「生活向上消費」


女性は、常に日々の暮らしを少しでもよくしたいと思っています。だから、生活向上につながる情報を好みます。レシピ、暮らしの知恵、ダイエットや健康情報などがそれにあたります。いつも生活情報にアンテナを張っているのです。


例えば、レストランの新商品の試食会などを開催したとしましょう。

女性消費者を集めたグループインタビューでは、必ずと言っていいほど、「これとこれを組み合わせるなんて考えたことがなかったです」「意外においしい、今夜すぐにやってみよう」「自分が知らなかった方法を知って参考になりました」といったような言葉が出ます。


自分基準で常に向上しようとする女性たち


常に自分を基準にして、少しでも自分が向上するための情報を得たいと思っているからです。逆に、「この程度なら自分でもできる」など、自分と同じでは意味がありません。

「さっきのサラダ程度なら、いつもの食材にフルーツを乗せただけだから別に新しい発見はないです」といった言葉が出ることもよくあります。自分を基準に、今より自分の暮らしや生活が向上することに関心を示すのです。


ツイッターで160万人以上のフォロワーを持つ(2020年12月時点)「リュウジ@料理のおにいさんバズレシピ」や「伝説の家政婦タサン志麻さん」などは、一般家庭の冷蔵庫にあるもので、家族構成を考えた料理をつくることが身近で新鮮と大ブレイクしました。


これは美容などでも同じで、化粧品を買いたいのではなく、「自分がきれいになりたい」がゴールです。

少しでも肌がきれいに見えるファンデーションの選び方、使い方、塗り方などを知りたいのです。


よりよい効果を求める女性の心が、消費を拡大していく


どんなに肌が美しくなるファンデーションと宣伝されても、それだけでは物足りなく感じ、どうしたらその商品を使って、最大限の効果が得られるのかという方法に関心を示します。

そのため、美容においては芸能人のメイクテクニックや、人気ユーチューバーの発信するテクニックの情報のほうが、メーカーの発信よりもはるかに具体的でリアルで役立ちます。ユーチューバーの紹介する商品のほうが、疑似体験やリアリティが高いため、欲しくなるのです。


生活向上消費には、こうした女性の“今よりよくなりたい”という向上意欲に応える「指南役」の存在があるとさらに強くなります。SNSによって女性たちの消費はどんどん熱くなっています。


日頃から周りの人に気遣いをする女性の「おせっかい消費」


「おせっかい」という言葉は、ほぼ女性に向けられた言葉でしょう。男性のおせっかいというのは、ほとんど聞きません。女性のおせっかいのイメージは、こちらが何かを頼まなくても、先まわりして何かをしてくれたり、買ったり、世話を焼いてくれたりするイメージではないでしょうか。

こうした「おせっかい行動」は、すべて自分以外の人のことを日頃から気にかけていることで起こる行動だと言えます。


たとえば、ひとり暮らしの息子や娘に対して、「お米、送っておいたから」「温かい下着、入れておいたからね」「しっかりご飯食べてる?野菜送ったからね」などなど、子どもの暮らしや身体を気にかけて何かを送るなどの消費行動は、ほぼ母親です。

父親が、子どもに冬の下着を送ったといった話は聞かないのではないでしょうか。


どの代にもみられる「おせっかい消費」のコミュニケーション


また、旅行シーズンになると、特急列車などで、中高年の女性たちのグループに出会うことがあります。彼女たちは次々とカバンの中から、まるでドラえもんのポケットのように、「おみかん食べない?」「おはぎつくったの」「おいしい漬物たくさんもらったから、あなたにもあげようと思って」などの会話が飛び交っています。


実は、こうした行動は20代でも30代でも変わらず見られます。「これ買っといたよ」「これ好きでしょう?このサイトで売ってるよ」などです。

「おせっかい消費」は、世代を問わずいつまでも女性たちの得意行動のようです。


次回は、女性の「代理購買消費」と「交際維持消費」についてのお話です。



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日野佳恵子

株式会社HERSTORY(ハー・ストーリィ)代表取締役  1990年創業 タウン誌の編集長、広告代理店のプランナーを経て、結婚、出産を機に専業主婦を経験。女性のクチコミ力、井戸端好きに強い衝撃を覚え、広告よりクチコミのパワーが購買に影響を及ぼしていることを確認。一貫して男女の購買行動の違いに着目したマーケティングを実践し、女性客マーケティングという独自分野を確立。多数のコミュニティや実店舗を自ら運営。10万人の生声、3万件に及ぶアンケート分析、5万人以上の男女購買行動を研究。


【著書】

「クチコミュニティ・マーケティング」

「女性たちのウェルビーイング」

「女性たちが見ている10年後の消費社会」等ベストセラー多数。

 

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