市場の8割を左右する女性視点マーケティング詳解vol.43
女性視点マーケティングの第一人者であり、株式会社HERSTORYの代表取締役でもある日野佳恵子による、本連載。第43回目は、男女の脳の構造と機能の違いについて、詳しく解説しています。
HERSTORYは、女性視点マーケティングを専門に事業を展開しています。この連載記事では、「女性視点マーケティング」の重要性に焦点を当て、具体的な事例を交えてわかりやすく解説していきます。皆様のビジネスに新たな視点やアイデアを提供し、今後の展開に役立てていただける内容となっています。ぜひ、ご活用ください。
男女の思考パターンに関する研究の背景
「男女の思考パターンに違いはあるか? 男脳・女脳の分析」という調査結果があります。
この研究は、早稲田大学、東京学芸大学生の男女学生の思考を、平成15年から平成18年の4年間にわたって分析したもので、男脳・女脳テストを毎年約100名で実施し続けています(「東京学芸大学紀要 自然科学系第59集」)。
研究テーマは、男女共同参画社会の実現に対して、男女が仮に思考パターンで違いが認められた場合で、真の意味で男女平等を考慮するならば、思考パターン(脳の性差)も配慮すべきであると考え、大学生を対象に思考パターンの男度・女度の調査を行なったというものです(『話を聞かない男、地図が読めない女』(アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ著 主婦の友社)に掲載されている判定診断を使用)。
男女の思考パターンの調査結果
〈男脳・女脳診断〉
男度の高い脳とは、空間能力、論理性が高い。
女度の高い脳とは、言語能力、共調性が高い
〈見解〉
この調査から、明らかに男女の思考パターンに違いがあることが示されていました。ただし、これらは男女の思考パターンが二分されるということを意味しているのではありません。
診断結果は、男子学生には男っぽい思考パターンを示す傾向が高く、女子学生は女っぽい思考パターンを示す傾向があることを示していました。近年、男女平等や多様性を語る時に、人間は同じであるという考えのもとに論じがちですが、多様性とは異なる傾向を無視するという意味ではないはずです。
真の意味で男女平等を配慮したものとは、個々の個性の前に、男女には大きな傾向が認められることを知り、さまざまな施策を講じなければ、結果、平準化の中で、本質的な問題を見落とし、不利益な人々を増やしてしまう危うさがあると感じました。
自社で行ってきた30の質問で行われた調査
この報告に類似した調査は、弊社でも行なってきました。
ウェブサイト上に「男女購買行動診断」を設置し、30問の質問の回答データとして蓄積してきました。その結果と酷似しています。
弊社の場合は、2004年から現在まで、すでに15年以上、8万人を超える蓄積データを取り続けています。
〈結果〉
男性は、約70%は男っぽい脳。中間が20%、残り10%が女っぽい脳。
女性は、約65%は女っぽい脳。中間が25%、残り10%が男っぽい脳。
男女の脳の構造と機能の違い
男性脳とは、左脳か右脳かを切り替える「方脳交互型」で、女性の脳は「両脳連携型」と言われています。
「両脳」とは、脳の左半球(左脳)と右半球(右脳)をつなぐ脳梁(神経線維の束)が、一般的に女性のほうが太いためです。女性は、左右半球の脳の接続がよく、連絡のしやすさからひらめきが多く、直観や感覚で物事を判断するタイプになると言われています。左脳とは、言語、事実、論拠をつかむ脳で、右脳とは、感情、情緒、感覚をつかむ脳です。女性の「快」は、右脳と左脳の連携が活発なため、事実と情緒がセットです。女性の「不」は、事実だけでも感覚だけでも納得できないことということを、覚えておいてください。
次回は、女性が発する「かわいい」から見る本能的な理由について解説していきます。
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日野佳恵子
株式会社HERSTORY(ハー・ストーリィ)代表取締役 1990年創業 タウン誌の編集長、広告代理店のプランナーを経て、結婚、出産を機に専業主婦を経験。女性のクチコミ力、井戸端好きに強い衝撃を覚え、広告よりクチコミのパワーが購買に影響を及ぼしていることを確認。一貫して男女の購買行動の違いに着目したマーケティングを実践し、女性客マーケティングという独自分野を確立。多数のコミュニティや実店舗を自ら運営。10万人の生声、3万件に及ぶアンケート分析、5万人以上の男女購買行動を研究。
【著書】
「クチコミュニティ・マーケティング」
「女性たちのウェルビーイング」
「女性たちが見ている10年後の消費社会」等ベストセラー多数。
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