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相互の情報交換で大きくなっていく女性のクチコミ

市場の8割を左右する女性視点マーケティング詳解vol.57


女性視点マーケティング戦略コラム

女性視点マーケティングの第一人者であり、株式会社HERSTORYの代表取締役でもある日野佳恵子による、本連載。第57回目は、コミュニティでの情報共有がいかに重要か、そしてそれがマーケティングに与える影響について解説します。


HERSTORYは、女性視点マーケティングを専門に事業を展開しています。この連載記事では、「女性視点マーケティング」の重要性に焦点を当て、具体的な事例を交えてわかりやすく解説していきます。皆様のビジネスに新たな視点やアイデアを提供し、今後の展開に役立てていただける内容となっています。ぜひ、ご活用ください。


 

クチコミ行動を好む女性たち


女性は「クチコミ」を好みます。その理由には、集団行動を好むからということを本ブログでは伝えてきました。


私自身は、女性のクチコミ行動を「クチコミュニティ」と命名して、2002年に『クチコミュニティ・マーケティング』(朝日新聞社)を発刊し、ベストセラーとなりました。


この本は、その後、『図解 クチコミだけでお客様が100倍増えた!』(PHP出版)なども含めて、シリーズや文庫本化され、あれから19年も経つというのにずっと売れています。

今でも「あの本がバイブルです」「あの本を読んだ衝撃をよく覚えています」とお会いする方から言われることがあります。

先日もある商談中に、「あ、まさか、と思い出して本棚を探しました。この本だけは捨てられなくて。まさかこの本の著者ですか?」と感動され、うれしかったです。


悩みや課題を解決するための助け合いの「クチコミュニティ」


膨大に本が出る中で、記憶されていること自体がありがたいことですが、それだけ当時は、女性とクチコミについての書籍は、新しくセンセーショナルだったのでしょう。


私はその後、この「クチコミュニティ」を商標登録しました。

「クチ+コミュニティ」は、女性の類似したクラスターの場で、悩みや課題を持ち、解決するための助け合いをするというイメージです。


女性たちの行動と現象をまとめた本『クチコミュニティ・マーケティング』


今でこそSNSも当たり前となり、女性たちがコミュニケーションにSNSを使いますが、この『クチコミュニティ・マーケティング』という本を書いた時は、ブログを女性たちが好んで書きはじめた頃でした。


芸能人のブログを読む女性も急増しています。

「ネットはツールでしかなく、女性はそもそもクチコミが好き。昔なら井戸端、電話、手紙、ブログ、SNSと交信手段は変わっても女性のクチコミ好きは変わらない」という内容で、多くの女性たちの目の前の行動と現象を見てまとめた本でした。


クチコミで広がっていった女性コミュニティ


私は1990年に広島市で創業しました。その当時はインターネットもなく「女性活躍」といった言葉もない頃でした。女性たちが集う機会をつくろうと、マーケティング事業と同時に女性コミュニティを立ち上げました。


会員登録制で、女性向けのイベントやセミナー、勉強会、パーティなどを開催していました。最初の会員は、チラシや新聞広告などを使って約300人からスタートしたが、半年もしないうちに広告をしなくても1000人、2000人と増えていったのです。


その理由は、会員から友達へのクチコミでした。


女性は自分がよかった場に、友達を連れて行きます。それはあの頃も今も変わりません。


バズるという言葉でメディアに変わったクチコミ


そして今ではネットによって当時の比較にならないほど多くの人に情報が届くことになったのです。さらに、「バズる」という言い方も広がり、クチコミは力を持ったメディアに変わりました。


当時の体験から、「女性のクチコミは、きちんと誠実に、感動と喜びを提供することに注力すればお客様が勝手に発信してくれる」と学んだのです。以来、このことは大切な考え方の柱にしています。女性は地域、友人・知人、趣味や習い事、そして職場のコミュニティというように複数のコミュニティに所属しています。


自分が「いい」と思う情報を持つと、すぐさま自分が所属するコミュニティのメンバーにも伝えます。


喜ばれることが好きで、同じ経験、体験をしてもらい、その気持ちを分かち合いたいという思いがあるからです。


「知り得たことは共有、共感したい」という情報伝達は、人助けとして本能に組み込まれています。


いい情報も悪い情報もすぐに周囲に伝えたい女性たち


女性は、「いい情報も悪い情報も早く周囲に伝えたい」と思い、うれしいこともつらいことも共有し合い、強い絆を築いていくのです。女性はライフイベントが増えるほど地縁などの儀礼的なコミュニティも増えていきます。


子ども会、PTA、義理の親や自分の親、子どもの習い事の先生、幼稚園や保育園の先生など、好むと好まざるとにかかわらず周囲との関係を築いて生きていきます。


ひとりの女性は、リアルな暮らしの中で、好むと好まざるとで実際に顔を合わせたつき合いをしながら、ネットを活用してコミュニケーションを行ない、関係維持をして暮らしているのです。


コロナ禍で女性たちがリアルな場でのコミュニケーションを失い、オンライン会議だけで会話をして過ごしていると、心がすさんでいく傾向が男性より多く見られたことがすでに報告されています。


女性たちには、コミュニケーションの場を大切に考えたマーケティングを行なっていきましょう。


  • 女性の「快」は、コミュニティの中で生成される相互情報が得られること。

  • 女性の「不」は、コミュニティがなく、孤立した状態、情報が入らないこと。


次回は、クチコミュニティサイトの事例をあげ、さらにクチコミについて解説します。



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日野佳恵子

株式会社HERSTORY(ハー・ストーリィ)代表取締役  1990年創業 タウン誌の編集長、広告代理店のプランナーを経て、結婚、出産を機に専業主婦を経験。女性のクチコミ力、井戸端好きに強い衝撃を覚え、広告よりクチコミのパワーが購買に影響を及ぼしていることを確認。一貫して男女の購買行動の違いに着目したマーケティングを実践し、女性客マーケティングという独自分野を確立。多数のコミュニティや実店舗を自ら運営。10万人の生声、3万件に及ぶアンケート分析、5万人以上の男女購買行動を研究。


【著書】

「クチコミュニティ・マーケティング」

「女性たちのウェルビーイング」

「女性たちが見ている10年後の消費社会」等ベストセラー多数。

 

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