市場の8割を左右する女性視点マーケティング詳解vol.66
女性視点マーケティングの第一人者であり、株式会社HERSTORYの代表取締役でもある日野佳恵子による、本連載。第66回目は、お客様が本当は何を求めているのかを知るインタビュー方法について解説します。
HERSTORYは、女性視点マーケティングを専門に事業を展開しています。この連載記事では、「女性視点マーケティング」の重要性に焦点を当て、具体的な事例を交えてわかりやすく解説していきます。皆様のビジネスに新たな視点やアイデアを提供し、今後の展開に役立てていただける内容となっています。ぜひ、ご活用ください。
インサイト(潜在的な購買欲求の核心)をつかむ聞き出し方
デジタルは単なるツールです。
私たちは生身の人間でリアルな暮らしをしています。商品を受け取り、箱を開け、取り出して、使用し、評価をするという一連の流れは、情報ツールがなんであったとしてもリアルに行われています。
意識的に、直接、生身のお客様に会う機会を設けなければ、お客様の本心を知ることができず、結局はサービスが低下し、顧客離れが起きてしまいます。お客様にとって何が大切なのか、その潜在的な購買欲求の核心部分を常に把握できる人材を育てることなくして、企業は生き残ることができません。お客様インタビューからインサイトをつかむための聞き方の一例を明記します。
インサイトインタビューの例
客:「黒のジャケットが好きです」
インタビュア:
NG「そうなんですね。黒はいろいろ合わせやすいですしね」(勝手に決めて言わない)
OK「どうして黒のジャケットがいいのですか?」
客:「服選びに悩まなくていいですから」「ほとんど黒が中心です。カバンや靴も。合わせるのが楽だし」
インタビュア:
NG「わかります。同じ色だとそのまま着てすぐに出かけられますよね」(意見を言わない)
OK「選んだり組み合わせたりが楽というのがいいんですね」(おうむ返しで確認)
「楽であれば、黒でなくてもいいんでしょうか」(手段なのか目的なのかを確認)
客:「そうですね。営業職でお客様のところに直接行くこともあるので、相手に対して失礼のない印象は心掛けています。それで無難な黒になってしまいます。あと、それ以外の色や柄をどう短時間で組み合わせればいいのかわからないし、黒ってセンスがなくてもごまかせますよね」
インタビュア:
NG「やっぱりセンスはよく見られたいですよねー」(「センスよく」とは言っていない)
OK「パッと朝、自分に似合う服が、センスよく全身コーディネートして用意できたらうれしいということでしょうか」(センスよいコーディネートを短時間に得たい、それが理想のようだ。さらに欲求度を確認)
客:「そりゃ、最高ですよ。センスよく好印象に見られたいけど、それができないし考えるだけで面倒だから黒になっているので」(黒は手段であって目的ではないと確認)
会話を掘り下げると見えてくる心の声
こうして個別インタビューで会話を掘り下げていくと、次のような潜在的な心の声が見えてきます。
購入した物(購買):黒のジャケット
顕在ニーズ(理由):他の物と合わせやすい
インサイト(心理):短時間で、自分の思うイメージ(好印象)のトータルセンスの服を着て出かけたい
チャンス(潜在ニーズ):本当に購入したい物は、黒のジャケットではない。
①短時間で選べる、
②センスの良いコーディネート
こうすると、新しい提案アイデアがわきやすくなります。
このケースの場合ならば、事前に本人の体形や顔立ちの写真を送ってもらい、AIスタイリストが自社ECサイトの中からジャケット、ブラウス、スカート、バッグ、アクセサリーなどをトータルコーディネート提案し、本人がチェックすれば、それらの商品が自動的にセットされた状態で送ってくるといったサービスはできないか、といったアイデアではどうでしょうか。
トータルセットは複数用意し、その中での着まわしや組み合わせも提案するシステムにしておけば、本人の買い物履歴と好みの傾向もデータ化できます。おすすめの冬のトータルコーディネートを先手で提案することも可能になるでしょう。
実際に、この類似サービスはネット上で生まれてきています。
言葉のニュアンスを読み解くインサイトインタビュー
インサイトは、発した言葉そのものではなく、その言葉の前後に含まれているニュアンスや情感を捉えることで本質が見えてきます。
その本質をつかむためには、質問者が自分の思い込みで発言したり、決めつけた誘導の質問をしないことが重要です。ぜひ職場で、2人一組になってこの「インサイトインタビュー」を練習してみてください。身近な仲間の知らなかった本音が、スタッフ同士でも発見できるかもしれません。
次回は、女性の超現実主義の購買行動について詳しく解説します。
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日野佳恵子
株式会社HERSTORY(ハー・ストーリィ)代表取締役 1990年創業 タウン誌の編集長、広告代理店のプランナーを経て、結婚、出産を機に専業主婦を経験。女性のクチコミ力、井戸端好きに強い衝撃を覚え、広告よりクチコミのパワーが購買に影響を及ぼしていることを確認。一貫して男女の購買行動の違いに着目したマーケティングを実践し、女性客マーケティングという独自分野を確立。多数のコミュニティや実店舗を自ら運営。10万人の生声、3万件に及ぶアンケート分析、5万人以上の男女購買行動を研究。
【著書】
「クチコミュニティ・マーケティング」
「女性たちのウェルビーイング」
「女性たちが見ている10年後の消費社会」等ベストセラー多数。
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