市場の8割を左右する女性視点マーケティング詳解vol.78
女性視点マーケティングの第一人者であり、株式会社HERSTORYの代表取締役でもある日野佳恵子による、本連載。第78回目は、男女の表現の違いを学びながら、効果的なプロモーション戦略を展開する方法を解説していきます。
HERSTORYは、女性視点マーケティングを専門に事業を展開しています。この連載記事では、「女性視点マーケティング」の重要性に焦点を当て、具体的な事例を交えてわかりやすく解説していきます。皆様のビジネスに新たな視点やアイデアを提供し、今後の展開に役立てていただける内容となっています。ぜひ、ご活用ください。
女性トレンドの70%はキャッチコピーで仕掛けられる
女性トレンドを作り出したかったら、今ある馴染みの商品に「新感覚」のアレンジをほどこしてネーミングにすることを考えてみるといいです。在庫の山になっている昔の商品を今一度掘り起こして、「今、これが新しい」として、着こなし方や使い方と合わせて新感覚のネーミングをつくり出したり、海外の名前を使うなどして、もともと似たものがあっても、新しいもののように伝え直すことで「新鮮さ」を出すと、蘇ることがあるのです。
コートとカーディガンを一緒にした「コーディガン」。
アスレチックとレジャーを合わせた「アスレジャー」。
ベランダでキャンプをするなら「ベランピング」。
鉄製のフライパンではなく「スキレット」。
耐熱性の陶器焼き型ではなく「ココット」。
他にも、着用後や使用後が素敵になっている、という状態そのものを名称の前につけた販売訴求方法は有効です。たとえば、ブーツの場合、「美脚ブーツ」や「あしながブーツ」、優しい色合いなら「きれいめブーツ」といった具合です。
女性が履いた時に足がどう見えるのかといった、着用後のシーンが想像しやすいコピーをつけるだけで、「あ、いいかも」と思わせることができます。
男女のファッション表現の違いとメディアを通じた学び
女性向けのアパレルでは、このように着用後のニュアンスを表現する手法が多用されます。たとえば、「抜け感」は気どりがなく、肩の力を抜いた感じのスタイルを意味し、「こなれ感」は自然でおしゃれな着こなしを表現します。このように、「感」という言葉を使うことがひとつのコツです。
こうした男女の異なるクリエイティブを学ぶためには、女性向けのメディアや雑誌もおすすめです。男女両方のファッション雑誌を購入し、職場で表現の違いを比較してみると、「男女の違い」に対する表現の違いを体感的にトレーニングすることができます。また、コンテンツメディアの「note」で、ある男性が男性雑誌と女性雑誌を比較している興味深いコラムを見つけたのでご紹介したいと思います。
事例:justice7さんの投稿から転載
膨大な新刊雑誌をネットで読むことのできる「dマガジン」で、興味深いことに気づいた。
すべての雑誌に詳細に目を通す時間はないので、当初は興味のある雑誌に目を通していた。習慣化するにつれ、世の中のニーズを探るため、あえて興味のない雑誌にも目を通すようになった。趣味の雑誌は予想通りだったが、男性総合雑誌と女性総合雑誌には、とても興味深い違いがあることに気づいた。
男性総合雑誌が「出来事」を中心に書かれているのに対し、女性総合雑誌は「人物」を中心に書かれているということだ。男性総合雑誌が最近起きた事件などが書かれているのに対し、女性総合雑誌は、最近注目されている人物などを中心に書かれている。
典型例として、男性総合雑誌に政治や経済ネタが多いのに対し、女性総合雑誌には各界で活躍している人物のことが詳細に書かれている。個々人の力ではどうにもならない世界経済の話題よりも、より身近な人物観察のほうが女性にとって関心が高いようだ。ある意味、女性のほうが男性よりも地に足が着いているようだ。
女性同士が集まると身近な人物(同じ職場の人たちのように本当に身近な人物)の話題に華が咲くのだろう。人間観察に長けている分、男性よりも女性のほうが「人を見る目」が確かなようだ。妻の浮気は絶対にバレないけど、夫の浮気はすぐバレるというのも、その典型かもしれない。
日本では、まだまだ女性の社会進出が進んでいない。男性より人間観察能力に秀でた(つまり「政治力」の高い)女性たちが入ってくるのを、男性経営陣が無意識的に恐れているようにも思える。日本の会社の経営陣の多くは「社内政治」の勝ち組だ。自分たちよりも遥かに政治的能力のある女性たちを経営陣に入れたくないと男性たちが無意識的に感じているのだろうか。そのような思惑が女性の経営参画を遅らせているとしたら、日本社会にとって極めて残念なことだ。
とても魅力的なコラムだったので、ここに掲載いたしました。
また、学術的な視点から雑誌を使った学びの意義についても面白い報告を見つけました。これは「表現学会」が発行する『表現研究』第92号に掲載された、中里理子氏の「若者ファッション雑誌に見る男女の文体差」研究結果報告です。「おわりに」からの抜粋をご紹介します。
「若者ファッション雑誌に見る男女の文体差」研究結果報告からの抜粋
2001年以降の男性雑誌には、化粧品等の美容関連記事やスイーツなどを取り上げる頁があり、女性雑誌への接近が窺われる。言い換えれば、女性雑誌のほうが時代の変化と流行に敏感であり、新しいものを積極的に取り入れる姿勢を持っていることにもなるだろう。
また、今回の調査を終えて、ファッション雑誌の語彙を対象に男女の語彙の違いとその移り変わりを見ることの有効性を実感した。(中略)ファッション雑誌を対象に語彙の男女差や移り変わりを調査する意義は大きいと思われる。
次回は、コピーや文章についてお話しします。
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日野佳恵子
株式会社HERSTORY(ハー・ストーリィ)代表取締役 1990年創業 タウン誌の編集長、広告代理店のプランナーを経て、結婚、出産を機に専業主婦を経験。女性のクチコミ力、井戸端好きに強い衝撃を覚え、広告よりクチコミのパワーが購買に影響を及ぼしていることを確認。一貫して男女の購買行動の違いに着目したマーケティングを実践し、女性客マーケティングという独自分野を確立。多数のコミュニティや実店舗を自ら運営。10万人の生声、3万件に及ぶアンケート分析、5万人以上の男女購買行動を研究。
【著書】
「クチコミュニティ・マーケティング」
「女性たちのウェルビーイング」
「女性たちが見ている10年後の消費社会」等ベストセラー多数。
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