全国47都道府県に進出完了!商品鮮度で勝負する雑貨ブランド
2023年10月号『HERSTORY REVIEW』の特集記事より転載
2022年の調査において、女性有業者は72.8%と過去最高を記録しました。これにより、消費者としても女性の意見は外せないものになり、「女性に支持されるものが売れる」時代が確立されようとしています。
今回は、「女性に支持される」ためのブランドづくりに成功している事例として、株式会社パルをご紹介いたします。
同社は、300円(税別)で購入できるアイテムを中心に、さまざまな生活雑貨を扱う「3COINS」を運営しており、2021年から3年連続で売上純増100億円※1を上回っています。
今年2月には、47都道府県全てに店舗進出を果たしており、9月には300店舗出店を達成するということですが、なぜこれほど好調なのでしょうか?
好調の鍵は、女性の心を掴む「〇〇買いできる価格帯」にありました!
※1 令和6年2月期第1四半期(期間:2023年3月1日~5月31日)
同社ブランドディレクター肥後俊樹 様にインタビューをして、モノづくりから販売に至るまでの秘訣について伺いました。
女性インサイト研究クラブin herstory会報誌
◆インタビュー内容:
開発基準は「ちょっとした幸せ」を届けられるかどうか
SNSを積極的に活用したプロモーション
入れ替えをスピーディに! 商品鮮度を徹底重視
開発基準は「ちょっとした幸せ」を届けられるかどうか
アパレルを手掛ける株式会社パルが、1994年にスタートした雑貨ブランド「3COINS」。消費者の”ちょっと幸せ”を手伝うことをコンセプトとし、デザイン性の高い商品をリーズナブルに販売している。「衝動買いしやすい価格を考えました。
当初は(300円)均一ショップでしたので、3つ買っても1,000円でお釣りが来るという値頃感を狙いました」と、ブランドディレクターの 肥後俊樹さんが説明するように、メインとなる商品は300円を中心としつつ、税別100円~3,500円程度までの価格帯のラインアップで展開している。
店内には常時2,000~2,500点の膨大なアイテムが並び、そのカテゴリーも食器やキッチンツール、収納などの生活雑貨から、帽子や衣類などの服飾関連、スマホアクセサリーや照明、生活家電に至るまで幅広い。
月に700~800点の新しいアイテムが続々と追加されているが、同ブランドの商品開発の根底にあるのは、価格以上の価値を提供できる商品であるか。つまり「ちょっと幸せ」を提供できる商品であるかが重要視されている。
さらにSNS上でのお客様の意見や、公式通販サイトのコメント欄なども参考にし、商品作りに活かしているという。また消費者だけでなく、各店舗で働くスタッフからの意見も、貴重な情報源として重視している。
「新商品のアイデアは、まずは自分たちが本当に良いと思うモノ、欲しいと思うモノであることから始まります。やっぱりモノが好きだから考えられるアイデアやデザインがあります。私たちは、普段の生活の中でも無意識にいつも雑貨の事を考えています。その上でその時のトレンドや、お客様の声も参考にさせていただきながら具体的な商品になっていきます。」(肥後さん)
SNSを積極的に活用したプロモーション
同社が導入しているのが複数のSNSを使い分けたプロモーションと社内インフルエンサー制度だ。2023年8月現在、「3COINS」の公式SNSを見ると、最もフォロワー数が多いのがInstagramで約172万人、X(Twitter)約19万人、Facebook約12万人、TickTokも合わせて累計200万人以上の消費者にアプローチしている。例えばInstagramで狙うのは新商品を中心としたカタログ的要素を担うことだ。幅広い年代層に向けて、商品の具体的な使い方を動画で配信する。またX(Twitter)は情報発信だけでなく、顧客や同ブランドの他アカウントとの相互コミュニケーションツールとして活用している。ここで注目したいのが、スタッフ個人によるInstagramの運用だ。「個を押し出した自分目線の投稿をお願いしています。社内制度として確立しており、評価制度の対象にもなっています」と肥後さん。 現在社内インフルエンサーとして活動するスタッフは約70名で、フォロワー数は約43万人となっている。例えば妊娠中のスタッフは、出産に備えたさまざまなアイテムを写真や動画、インスタライブを駆使して精力的に紹介。スタッフが消費者側に立った配信を続けることで、「3COINS」のコアなファン作りに大きく貢献しているのだ。
入れ替えをスピーディに! 商品鮮度を徹底重視
「3COINS」の売り上げを伸ばしているもう1つの要因は、商品の入れ替えをスピーディに行い、商品鮮度を保っている点だ。基本的に新商品は2~4週間で売り切るように計画している。「反響が大きかった物は定番商品として再販することもありますが、『3COINS』全体では鮮度を重視しているため、短いサイクルで商品を入れ替えています」(肥後さん)いつ行っても常に新しい商品との出合いが期待できるのは、「3COINS」の大きな強みだろう。特に同店は、駅構内や駅付近の商業施設、大型ショッピングモールなど人の出入りが多い場所に店舗を構えていることが多い。こうした商品の頻繁な入れ替えにより、通勤や通学、食材の買い出しついでに訪れるリピーターから、飽きられてしまうリスクを避けることもできる。評判の高かったアイテムは定番商品として継続的に販売を行う。例えば、収納カテゴリーでとりわけ人気の高い「クリアボックスバッグ」については、「買い足していくので絶対に廃盤にしないでほしい」といった切実な意見も届いており、こうした消費者の声に耳を傾けながら、肥後さんたちは商品計画を練っていく。今後の課題となっているのは、ここ数年急激に進んだ店舗の大型化に合わせて、商品企画力を問われていることだ。「さらなる商品企画の強化を図っていきたいですね。今まで商品化してこなかったジャンルや、男性向け商品なども開発していきたいと思います」と肥後さんも意欲を見せる。30年近く女性を虜にしてきたモノづくりのノウハウが、新ジャンルでどのように活かされていくのか。今後のラインアップから目が離せない。
◆インタビュー:
株式会社パル
3COINSブランドディレクター
肥後俊樹 様
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